甦れ!楽器!


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 オルフェの会員の自宅の物置に、古いドラムセットがありました。聞けば、昔知人が置いて行った
もので、廃棄したいが、処分に困っているとのこと。なるほど、埃にまみれ、外見はボロボロ、金属部分
は錆だらけです。 でも・・・。 ドラムセットって買えば1式ン十万円はします。ちょっとやそっと買える
ものではないし、古くてもあると無いとでは大違いです。あれば叩いて遊ぶことも出来るし、上手くすれ
ば小さな演奏会には使えるかも・・・。 
 オルフェに寄付してくれるとのことなので、再生に挑戦してみることにしました。

 @バスドラム    
 Aスネアドラム   
 Bタム        
 Cフロアタム     
 Dハイハットシンバル 
 Eクラッシュシンバル

1個  
1個   
1個
1個
1個
1個@

 左記の楽器名がピンと来ない人は
 次を見て下さい。

 1.Before 

 バスドラムです。メーカは「PEARL」。国内シェアでは昔も今もトップだそうです。

 ヘッド(皮)は破れてはいませんが、見るからに古い。外側の化粧シートは
亀裂が入り、金具は
錆だらけです。金メッキのロゴは汚れているだけですが、それを止めているクギ(元は同じ金色?)
は真っ黒です。でも、肝心の胴はしっかりしている。木に腐食、カビ、虫食いなどはありません。
 幸い、雨水にやられたことはなかったようです。
 これなら、錆取りして、化粧シートを貼り直し、出来ればヘッドを交換すれば、使えそうです。

 他の楽器も同様でした。ここでは、バスドラムについて、修復の過程を御紹介します。

 2.解体  

メタリックの化粧シートも哀れ

 古ぼけた印象の外観

タムを受ける金具。錆びています。

ヘッドを締める金具もこの状態

バラバラにしました。これで部材全部です。ドラムの
中にはダンピング用の座布団が入っていました。

化粧シートを剥がしたドラム。化粧シートはボロリと
剥がれましたが、胴の木質は全く問題ありません。

金具を外す前のドラム内部。ネジは錆び始めています。
湿気を吸い、結露位は起きたようです。

金具全てです。変色から錆びの段階へ進んでいます。

修復の方針は「お金を出来るだけ掛けないこと」です。

 3.ドラムの化粧

 胴体をどうするかです。一番目立つ部分ですから、ど派手にしたい。
 何かないかと、ホームセンターへ。壁紙のようなものをイメージして行ったのですが、ぴったり
なものを見つけました。

 「スーパー・メーク・アップ・シート」だそうです。幅45cm長さ2mで、800円也。裏紙を
剥がせばそのまま貼れます。色は、赤、青、黄、白、黒、アイボリー、他がありましたが、
迷わずオルフェのシンボルカラーである赤を選びました。

 胴を良く清掃した後、裏紙を剥がしながら貼って行きます。乾いたタオルで擦って空気を抜き
ながら貼って行くのがコツです。一周したら余長と両側のはみ出しをカッターナイフで切り離せば
この作業は完了です。

 4.錆取り

 あったもの

 5.再組立

 6.After

用意した処理剤です。左の2種は除錆剤。
「Rust Disolver」は10年ほど前に購入した
もの。今回は「サビアウト」を購入しました。
錆止め油を含めて、何れもホームセンタで
買える安いものです。

しかし、除錆剤の主体は「サンポール」と
それの100円ショップ版「ナイス」でした。

「Rust Disolver」も「サビアウト」も主成分は
10%程の濃度の燐酸と界面活性剤です。
燐酸に金属表面の除錆と、除錆後に保護
膜を形成する能力があることを利用して
います。

Rust Disolver

お手入れ油

サビアウト

クレ 5-56

キッチンタオル

除錆剤

錆止め油

 したがって、これを利用すれば、後処理は拭くだけですから、非常に便利なのですが、今回の
ように大量の金属を処理するには、沢山買わなければならず不経済です。

 リン酸以外の酸でも除錆能力は同じです。ネットを検索すると、トイレの洗剤「サンポール」が
強力な除錆能力を持つとか・・・。しかも、500mlボトル1本が150〜200円、100円ショップの
類似品「ナイス」なら、105円。今回はこれを使用してみることとしました。

 但し、成分は塩酸で保護膜を形成する能力はなく、恐ろしいほどの速度で再錆するので、即座
に防錆処理が必要とのこと。「お手入れ油」「クレ 5-56」はこのために用意しました。
 なお、キッチンタオルは水分や油分の拭き取り用です。

 4.1 小さな金具類の錆取り

 塩酸ですから容器を2重にして、サンポールの希釈(2〜3倍)水溶液を作ります。
 これに全ての金具を一度に入れて、15〜30分漬け置きます。箸は様子見のため。
 盛んに泡が出ます。右の写真は15分程度過ぎた時ですが、タム受け金具が輝きを取り戻して
いる様子が分かります。泡が汚れているのは、錆が金具から離れて表面に出て来たもの。
 時間が来たら金具を歯ブラシの使い古しを使って擦ると、錆がまるでドロ汚れを落とす時の様
に落ち、ピカピカになります。ちょっと感動ものです。その後、アルカリ性のキッチンマジックリン
水溶液に浸して酸を中和した後、良く水洗いし、水分をキッチンタオルで吸い取って乾かし、
直ちに油を塗っておきます。

 4.2 リムの錆取り

 大きなプラスチックのたらいが欲しいところですが、金を掛けないことが方針ですので、ダン
ボールの空き箱とゴミ収集袋でプールを作り、水道水を入れます。そこへ「ナイス」を2本(1g)
注ぎ込みます。。

 リムを部分的に沈め若干経過した後、タワシ、歯ブラシで擦りながら回して行きます。
 3回ほど回すとほぼ除錆出来ます。これをリム2本について行い、最後に2本ともプール
に入れて、1回回します。マジックリン水溶液に浸して酸を中和した後、良く水洗いし、水分
をキッチンタオルで吸い取って乾かし、直ちに 油を塗っておきます。

 部品が出来たら組み立てます。胴体に
金具を付け終った状態です。

 ヘッドを取り付けて完成です。タムの取付け金具も見違えるような輝きを取り戻しました。
 ロゴの取付け釘も真鍮釘の新品に交換です。ただし、ヘッドの交換は今回は見送りました。

 そして・・・、Before & After です。

 同様に再生させたスネアドラム、フロアタム、タム、スタンドです。

  廃棄寸前のドラムスが、「新品」とは行かないけど「ちょっと古い」位には復活しました。
  初めての経験でしたが、ドラムスの構造を良く知ることも出来、楽しくてすっかりはまって
 しまいました。掛かった費用は全部でおよそ3千円でした。

  サンポールおよびその類似品の除錆能力は凄いものです。安いので、容器さえあれば、
 錆びた自転車のフレームを入れてごっそり除錆することも出来そうです。ですが、再錆
 防止処理が時間との勝負で大変です。薬問屋に行けばリン酸の原液も1リットル800円
 程度で買えるようです(どこへ行けばいいかは分かりませんが・・・)ので、大規模な除錆を
 行うときは検討の価値があります。小さなものの除錆には、最初に紹介した除錆剤が
 やはり便利なようです。筆で塗るように使えば楽です。

  他の楽器も、チャンスがあれば修復してみたいと思っています。

 7.まとめ

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ドラムセット/ウィキペディア

   バスドラムを叩くペダルのBefore & After・・・。ボロボロの皮は新品が入手出来ず、結局合成
 繊維製の子犬の首輪(青いバンド)を使用しました。